研究課題/領域番号 |
20330047
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
菊谷 達弥 京都大学, 経済学研究科, 准教授 (80183789)
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研究分担者 |
西村 直子 信州大学, 経済学部, 教授 (30218200)
小川 一仁 関西大学, 社会学部, 准教授 (50405487)
齋藤 隆志 九州国際大学, 経済学部, 准教授 (60437283)
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キーワード | 成果主義賃金制度 / マルチ・タスク / 質問票調査 / 経済実験 / 経済事情 |
研究概要 |
質問票調査について2種類の成果を得た。1つは、既存のアンケートデータを用いて、どのような要因が企業に成果主義賃金の導入を促すかを、ステイクホルダー仮説にもとづき分析したものである。これにより以下のことがわかった。労働組合の存在は成果主義賃金の導入に抑制的であるが、労使協議会が設けられている場合はそれを緩和する効果がある。また従業員の平均年齢が(直近の5年で)すすんだ企業では導入されやすい。これは全体として賃金上昇の抑制効果をもつが、同時に、中高年層ステイクホルダーの賃金削減と若年層ステイクホルダーの賃金増大という、所得分配の変化を意味する。さらに興味深いことに、非正規従業員の比率が高い企業ほど、成果主義賃金は導入されにくい。そして売上成長率が低い企業ほど導入されやすく、成長率の変動が大きい不確実性の高い企業では導入が抑制される。企業ガバナンスの観点からは、アウトサイダー株主が多いほど、負債比率が高いほど、導入される傾向がある。 他の1つは、自動車ディーラーに対して人事制度に関するアンケート調査を行い、データを分析したものである。自動車ディーラーでは個人の業績・成果が特定しやすい上に、組織も比較的単純であり、事業内容も企業間で相似的であるために、比較調査に適している。日本自動車販売協会連合会の全会員1372社を対象に行い、400社からの回答を得た。驚くべきことに、評価制度とその利用法(賃金・賞与・昇進・能力開発など)については、全体として一般企業(金融業を除く)と大きな違いはないことがわかった。これは、量的な業績結果だけでなく、結果にいたる過程で示す行動などの質的な側面を重視しているためである。またこれは、同時に行ったディーラーへの聞き取り調査の結果と一致している。だたし、同年代で比較した年収格差の程度はディーラー販売社員の方が若干大きい。
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