研究課題/領域番号 |
20330075
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研究機関 | 流通科学大学 |
研究代表者 |
加藤 慶一郎 流通科学大学, 商学部, 教授 (60267862)
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研究分担者 |
岩橋 勝 松山大学, 経済学部, 教授 (20069321)
浦長瀬 隆 神戸大学, 経済学研究科, 教授 (80176742)
西村 雄志 松山大学, 経済学部, 准教授 (10412420)
城山 智子 一橋大学, 経済学研究科, 教授 (60281763)
名城 邦夫 名古屋学院大学, 経済学部, 教授 (90097684)
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キーワード | 通貨構造 / 決済 / 商品流通 / 近代移行期 / 支払手段 / 手形 / 信用制度 / 貨弊 |
研究概要 |
本研究の目的は、統一的通貨単位・中央銀行制度・金本位制などから構成される近代通貨・決済システムの19世紀日本における成立について、比較史.関係史的観点を加味しつつ、「決済」の視点から接近するものである。 各国の事例に基づく比較史では、17世紀頃のニュルンベルクでは、通貨乱立の下で設立された市立為替銀行は、先行したアムステルダム銀行とは異なり、コスト的に経営上のメリットの無い小額貨幣までをも発行し、地域の民衆レベルの取引決済の安定化を図っていた。1920年代の中国では、1920年代には米国人の手を借りて全国調査を行わざるを得ないほど通貨・決済をめぐる問題は深刻だった。それだけに本調査の個票により全国的な通貨構造解明の手掛かりを与える。20世紀のインドでは、在来的制度がなおも強固な基盤をもっており、日本綿業をめぐる「棉花畑から神戸港まで」の一連の取引の決済においても、多角的・国際的決済システムの核であるロンドン金融市場とともに、現地の商人・金融業者らの深い関与が見られた。 近代移行期の日本に関しては、次のようなことが明らかとなった。幕末期の大坂の決済を仔細に検討してみると、従来の両替商手形の普及に代表される先進的イメージとは異なり、実際には大半が現金決済だったことが明らかとなった。これは、当該時期の通貨事情が決済に強く作用した可能性を示唆する。東讃岐地方においては、幕末期に藩札相場が固定化され、実質的に金札化されていた。他方で、銀建て廃止後の明治初年においても商家経営では銀建ての勘定が継続し、またその金との換算相場は安定的ではなかった。これには銀建ての藩札の回収が渋滞したことが一因と考えられる。北陸~西南地方においては、銭に基づいた、高額面の紙幣が発行・流通していた事実が確認されている。これらは近世通貨構造における銭の位置づけに再考を促すものであり、さらに今後は明治初期の動向の解明が待たれる。
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