研究課題
2010年度は、6回の研究会・エクスカーションを要にして、大阪市の北区連合地域振興町会調査の分析、北区内の大規模マンション住民調査の分析、中央区のターミナル繁華街である難波地域の調査、大阪都市圏にある夜間中学校の調査を中心に研究を進めた。連合振興町会の調査によると、大阪市の都心区である北区は、19の連合の地区別に分析すると、おおよそ5つの地域特性を持っていることが判明した。旧北区にあたる地域は、(1)ターミナル・繁華街地区(居住民の激減)、(2)商業・業務・住宅混合地区→大規模マンション増加(居住民の急増)、(3)商店街・中小マンション混合地区→大規模マンション増加(居住民の増加)に区分できる。また、旧大淀区の旧工場・労働者居住地区は80年代以降に住商工+集合住宅地区に変動した地区で、これは(4)公的住宅集中地区(居住民の停滞・減少)、(5)戸建・中小マンション+大規模マンション建設地区(居住民の人口増)に区分できる。マンション住民調査によると、20年以前にできたファミリータイプのマンションでは、住民のコミュニティ意識もあり町会も組織され、一定のまとまりがある。1990年代後半以降に建設された大規模マンションの住民はファミリータイプでも、コミュニティ形成の意思が弱く、また旧来の地域住民との関係も希薄である。さらに、賃貸ワンルーム・マンションの住民は、住民同士もまた地域の旧住民との関係においても交流が全くない。こうして、旧住民と都心回帰により流入してきた新住民との関係には、お互いは物理的・空間的には近接して暮らしていても、社会関係・心理的には全くの擦れ違いが見られることが判明した。年度末には、これらの研究成果を研究分担者・研究協力者の協力を得て『「都心回帰」時代における大都市の構造変容-大阪市を事例として-』と題した報告書(360頁)を刊行した。
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評論:社会科学
巻: 第92号 ページ: 1-87
コミュニティ・自治・歴史研究会『ヘスティアとクリオ』
巻: No.9 ページ: 5-17
犯罪社会学研究
巻: 35号 ページ: 38-53