高Mn鋼の耐力に及ぼす変形様式の影響を調査した。三種類のプレート状塑性変形メカニズム(変形誘起γ→εマルテンサイト変態、γ双晶変形、すべり変形)の共通性と相違性に着目して、その発生・発達過程と力学特性への影響が整理できる。いずれの変形様式も{111}最密面上のシアー変位によって形成されるプレート状組織であり、積層欠陥の規則的な積み重なりによって記述される。一方、プレートの発生・発達過程と力学特性には、相変態による格子型・格子定数の変化の有無と、積層欠陥エネルギーやプレート核生成サイトの分布形態によって決まる積層欠陥の拡張幅が、塑性変形開始応力やプレートと他の組織との相互作用に多様な影響を及ぼして、多結晶合金のマクロ特性としての耐力が決定される。
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