沖縄本島と周辺離島に分布し、毎年開花するオキナワスズムシソウS.tashiroi(オキナワ)と沖縄本島、八重山諸島、台湾島に分布し、6年に一度一斉開花するコダチスズムシソウS.flexicaulis(コダチ)の分布が重なる沖縄島本部半島に見られる推定雑種の詳細な形成プロセスを明らかにし、形成された雑種が独立種として確立する雑種種分化が生じているのかどうか明らかにするため、推定両親種の分布範囲において野外調査を行い、1)生活史、2)外部形態、3)訪花昆虫などを観察・比較した。また、4)葉緑体・核DNA系統解析、5)CAPS解析を行った。この結果、推定雑種は実際の交雑により生じたもので、形態的にも遺伝的にも一様ではなく、コダチからの花粉が交配することにより、雑種第1代およびその後代が形成されており、オキナワからの花粉はほとんど貢献していないことが明らかとなった。これについて、現地調査にもとづき、一斉開花の時にのみ十分なポリネーターが活動し、その際に圧倒的に大量な花粉がコダチから提供されることが主な理由であると推定した。また、雑種後代が存在することから、推定雑種が独立種として分化する方向に向かっているとは言えないと考えた。
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