研究概要 |
RNAiは、簡便で優れた遺伝子発現の抑制技術であり、すでに基礎研究の分野では一般的なツールとなっている。さらに医療分野においても、数年以内にRNAi治療薬が登場しようとしている。これら(従来)のRNAiは、ターゲット遺伝子に対してその発現を強力にノックダウンする目的で設計され使用されている。そのため正常型対立遺伝子であっても変異型対立遺伝子であっても目的の遺伝子は強力にノックダウンされる。しかしながら、そのような対立遺伝子を区別しない強力な発現抑制が必ずしも良いとは限らない。正常型対立遺伝子のノックダウンによる副作用の可能性を考えると、正常型遺伝子を抑制しないで病因となる変異型対立遺伝子を特異的にノックダウンすることが必要となる。そこで本研究は、遺伝性の神経疾患の原因遺伝子上の変異を目印に、その変異を持った原因(対立)遺伝子だけを特異的にノックダウン(正常型遺伝子には影響しない)する次世代のRNAi誘導技術の確立を目指す。H20年度は、プリオン病に関連するプリオン遺伝子変異そして家族性アルツハイマー病に関わるAPP遺伝子の変異を対象に対立遺伝子特異的ノックダウンを誘導するポテンシャルを持ったsiRNAの設計そして評価を行なった。そして、その一連の解析から対立遺伝子の識別を増強させる構造的修飾について有用な知見を得ることができた(Ohnishi et al.,2008)。来年度はこの成果を基に、さら複雑なトリプレットリピート病に対する病因(対立)遺伝子特異的RNAiノックダウンの実現に向けた研究を実施する。
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