本研究は、宗教復興が進む中国で1990年代以降に顕著になった、宗教を「象徴資本」として活用する政府の政策と、それに対する宗教、とりわけ民俗宗教の側との、相関と相克の複雑多岐に渡る関係性の中で構築される「諸状況」を主なる研究対象とする。 また現政権の宗教政策は、清末から続くモダニティの推進過程の延長線上にあり、現在見られる「諸状況」は過去にも遡及される。 このため本研究では、宗教実践のなかで創出される「諸状況」を、「状況的な社会構築」と把握し、民国期以降における「諸状況」を対比的に視野に入れながら、人びとが時々の政策をどのように考え、どう対応し、何を実行してその結果がどうなったかの事例を積み上げて、中国における宗教実践が構築される様態を明らかにしようとするものである。 以上の研究目的のために、中国の、1東南部経済先進地域の宗教実践の様態、2経済的後発地域の宗教実践の様態、3現政権の宗教政策と実施状況、4清末から民国期、現在に至る宗教政策とそれに対する宗教実践の状況の4点を調査対象とし、文化人類学的な現地調査を中心に実施、対象とした調査地に赴いての聞き取り調査と文献などの史・資料蒐集と解読、またこれら多様な情報の関連性などの比較検討のため、年1回合宿形式での研究会を実施する。
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