研究代表者は、本研究課題の前に、媒介変数を伴う連立多項式を計算するアルゴリズムを開発したが、実用性という意味での完成度は低いままに留まった。本課題では、媒介変数を含むグレブナー基底の計算手法についての研究を推進した。 大量のメモリを利用できる環境を前提とした、グレブナー基底を計算するブッフバーガー・アルゴリズムかちめ見直しを含めた新しいアルゴリズムの見直しも行った。ここでは線形代数及び、グレブナー基底計算に適した多倍長整数の新しいデータ構造をも提案した。線形代数を用いたグレブナー基底計算は過去から提唱されてきたが、ここでは計算の効率を見据えて、敢えてグレブナー基底とは異なる「基底」を計算してから、そこからグレブナー基底へ変換するという手法を取った。また、多倍長整数のデータ構造については、モジュラー計算、遅延演算、キャッシュといった手法を駆使したものとした。これについては、試験的な実装を行い平成21年度に学会等にて発表したが、その評価については今後の課題として残された。 また、本研究課題のアルゴリズムの教育への応用への準備として、スマートフォンなどのモバイルデバイス向けの数学ソフトウェアの開発にも取り組み、iPhone向け、Android向けにいくつかのアプリケーションソフトウェアを作成し、配布した。高速なCPU、加速度センサー、精度の高いタッチパネルなどを搭載した昨今のモバイルデバイスの教育への効果が期待できそうなソフトウェアであった。本内容については平成22年度に発表を行った。実際の教育現場等での評価については今後の課題として残された。
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