研究概要 |
本研究は,水平画素数1000を超え,毎秒60フレーム程度の高精細・高フレームレート動画像(HD画像)を対象として,圧縮符号化時における時空間の画質を最大化・平坦化する新しいレート制御・符号化法の確立を最終目的とするものである.平成21年度は当初の研究実施計画に基づき,(A)与えられた符号化ビットレートと使用可能なバッファ量に基づき,MOS予測値の最大化と平坦化を実現するHDに対する新しい符号化器を実現すると共に,その利点・優位性を明らかにすることを主たる目的とし,同時に昨年度残された課題(B)HD画像に対する時空間MOSの予測精度の検証と向上,を並行し研究を行った.(A)については,発生符号量とバッファの占有量の拘束条件の下で,対象となる各シーンのMOS予測値の最小値が最大となるように各シーンのビットレートを再割り当てするアルゴリズムを構築し,シミュレーションによって実際に対象動画像の画質が平坦化されることを確認した.また,これを実際にH.264符号化器上に組み込み,MOSの最大化・平坦化を実現するレート制御法を備えた符号化器を実現した.(B)については,時空間MOSの予測式を再導出するため,多数のHD画像に対する主観評価実験を行ってMOS分布を測定し,これより時間および空間両方向の新しいMOS予測式を求めた.以上により平成21年度の研究計画はほぼ達成されたが,実現した符号化器の優位性・有効性についての評価は未だ不十分であるため,次年度の計画に追加し評価を進める予定である.
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