本研究は、心的過程の神経機構、すなわち、脳が手掛かり依存的に時系列を生成する仕組みをモデル化し、それに基づいて情報を時間的・空間的に構造化して抽出するアルゴリズムを構築することを目的として開始された。先ず、単一ニューロンあるいはニューロン集団(ユニット)に多重ヒステリシス特性を仮定することにより、これらのユニットをノードとするネットワーク上に、初期状態に連続的に依存するアトラクター(連続アトラクター)として表される神経活動パターンを生成できることを示した。次に、単一の多重ヒステリシスユニットが完全積分器として機能することを見出した。以上の結果は、研究開始にあたって立てた仮説「心的過程、すなわち、神経活動の手掛かり依存的な時空間パターンの生成の仕組みは、連続アトラクター力学により記述される」を支持する。さらに、連続アトラクター力学を用いて実世界における様々な複雑ネットワークから手掛かり依存的に時系列を読み出せること、この読み出しがベイズ推定として定式化できることを示した。
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