研究課題
昨年度合成した分子量7,000のPLL、2,000のPEGによるカチオン性共重合体をBiacoreにより解析した。Biacoreの測定用チップにはカルボキシル基が高密度に修飾されており、これを直接用いるにとでもアニオン性の高分子であるsiBNAとの相互作用を模倣できると考えた。カチオン性共重合体の結合様式、結合価は高分子物質である以上一義的に定義することは困難なため、結合初期と、解離初期から、結合速度定数(ka)と解離速度定数(kd)を算出した。その結果、結合速度定数はPEGグラフト率の増加に伴い漸次低下した。一方解離速度定数はPEGグラフト率20%までは急激に増加するもののその後60%まではほぼ一定であり、また80%では低下する傾向がうかがえた。今後よりカチオン価数の多い長鎖のPLLを使用して同様の実験を行う必要があると考えられた。一方カチオン性共重合体によるsiRNAデリバリーを培養細胞で評価した結果、グラフト率の低い共重合体ではsiRNAの活性が観察されたものの、グラフト率の高い共重合体ではその活性が著しく低下することが判明した。このことはsiRNA活性は腫瘍集積性と相反することを意味しており、その改善のためには高いグラフト率における細胞との相互作用を強くする工夫が必要と考えられた。本研究課題ではsiRNAにかえて、光線力学療法に使われているポルフィマーとの相互作用とその腫瘍へのデリバリーを検討することとした。ポルフィマーとカチオン性共重合体との相互作用を電気泳動によるゲルシフトアッセイで検討した結果、チャージ比4以上で複合体を形成することが明らかとなった。また培養細胞を用いた光刺激細胞障害性実験ではカチオン性共重合体との混合条件であっても十分に細胞傷害活性を有していることが示唆された。カチオン性共重合体はポルフィマーのデリバリーに十分期待が持てると考えられた。
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J Control Release (in press)