研究課題
前年度までの解析によりカチオン性共重合体とsiRNAは血清存在下においても安定な複合体を形成し、ルシフェラーゼを発現する腫瘍を移植したマウスを使った検討から、実際に選択的に腫瘍の遺伝子発現を抑制できることを見いだした。しかしPEG修飾率が高いほどsiRNA活性が低くなることも培養細胞を使った検討により判明した。すなわち腫瘍集積性とsiRNA活性の両立は簡単ではないことを意味している。そこで最終年度となる本年度は抗腫瘍効果を有する薬剤との複合体化とデリバリーを検討した。薬剤として光線力学療法に実際に使用されているポルフィマーナトリウムを選択した。ポルフィマーはヘマトポルフィリンの二塩酸塩を原料として合成されたエーテル及びエステル結合による多量体で全体の68%が二量体を占める。二量体の場合、カルボキシル基を4つ持つアニオン性物質となる。そこでポルフィマーとカチオン性共重合体を混合後、電気泳動によるゲルシフトアッセイにより複合化能を検討した。その結果、混合比依存的に複合体を形成することが明らかとなった。また1 mol/Lの塩化ナトリウム存在下でも複合体を維持していることが観察された。そこでリシンのεアミノ基を全てアセチル基に置換することで、正電荷を無くした共重合体で同様に検討した結果、やや結合性は低下するもののポルフィマーと複合体を形成することが明らかとなった。以上の検討により、ポリリシンを主鎖骨格とする本カチオン性共重合体はポルフィマーと静電的な結合の他に他の結合力、おそらく疎水結合で相互作用することが明らかとなった。つづいてハロゲンランプ照射による光誘導性の細胞障害性を上記複合体で検証した。その結果、複合体もポルフィマー担体と同等以上の細胞障害性を有することが明らかとなった。
すべて 2011 2010
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (4件)
Journal of Control Release
巻: 149 ページ: 2-7