研究課題
本研究の目的は通常肺疾患・肺機能障害に陥った際に用いる人工心肺装置・膜型体外循環人工肺とは全く異なるもので、ポンプを使用することなく呼吸を補助できる膜交換式人工肺を用いた際の生体機能の変化・動態変化について各種生体計測装置を用いて計測し、膜交換式人工肺の定量的な管理手法を明確にすることにあった。初年度である平成20年度は動物実験と並行しながら、生体計測のためのシステムを構築することを目的として、体外式肺補助装置の流速・出入り口圧力・血液ガスデータ・酸素飽和度等の各種バイタルサインをノートPC上に取り込み、記録できる簡易システムの基本構成を確認することができた。翌平成21年度は前年度に実施していた動物実験を引き続き行いながら、各種バイタルサインの測定を実施し、この計測データよりバイタルサインデータと膜交換式人工肺の性能を指し示す指標について検討してきた。そして平成22年度は引き続き、肺障害モデルにおける膜交換式人工肺についての挙動を含めたデータの蓄積及び分析を続け、肺補助装置と血行動態を表すモデル式を導出することを目的としてきた。現状では残念ながら最終的なモデル式の導出までには至っていないが、その傾向が定量的に明確になってきている。例えば動脈血中の炭酸ガスの除去量及び酸素量の添加量は時間の経過とともにそれぞれ少しずつ性能が低下していく様子を定量的に表すことが可能となってきた。特に生体の呼吸機能の中でも管理値としても重要な炭酸ガス量についてはこの膜型体外循環人工肺の臨床使用時における挙動に近い値を示すことが確認できた。さらにその精度を向上させるためにも引き続きデータの分析が必要であると考えている。