【目的】リンパ浮腫の治療法として、保存的治療と手術治療の効果を比較検討すること。 【方法】対象は子宮体癌・子宮頚癌・卵巣癌術後(骨盤内リンパ節郭清施行)に続発性リンパ浮腫を下肢に発症し、複合的治療もしくはリンパ管静脈吻合術を施行された患者。複合的治療は外来にて日常生活指導、スキンケア、圧迫療法、圧迫下での運動、リンパドレナージを実施するものとし、圧迫療法としてを終日実施した群(包帯群)とと圧迫衣類を併用した群(併用群)に分類した。治療効果は後方視的に膝蓋骨上縁から10cm近位(AK10)、膝蓋骨下縁から10cm遠位 (BK10)・20cm遠位(BK20)、足関節(ANKLE)の周径(cm)で評価した。 【結果】包帯群13例、併用群15例、手術群17例であった。包帯群および手術群では、治療前と比べて治療開始1か月後の下肢周径はすべての部位で有意な改善を認めた(対応のある2群の検定)。一方、併用群ではANKLEのみ有意な改善を認めた。3群間の比較ではAK10、BK20、ANKLEでは手術群よりも包帯群の方が、BK20、ANKLEでは併用群よりも手術群の方が有意な減少を認めた(2元配置分散分析、FisherのPLSD)。 【考察】複合的治療、リンパ管静脈吻合術のいずれの治療方法ともに、リンパ浮腫の改善効果が得られることがわかった。リンパ管静脈吻合術の実施の際には、その適応と手技の選択が慎重になされなければならないが、保存的な複合的治療と同等、もしくはそれ以上の改善効果が得られるため、適応を選べば、保存的治療と並んで治療の選択肢として位置づけられることが示唆された。
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