研究課題/領域番号 |
20500884
|
研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
高橋 則英 日本大学, 芸術学部, 教授 (10188039)
|
研究分担者 |
原 直久 日本大学, 芸術学部, 教授 (00060111)
田中 里実 日本大学, 芸術学部, 助教 (10547102)
|
キーワード | 写真史 / 古写真 / 写真技法 / 湿板写真 / 文化財保存 |
研究概要 |
幕末明治期の風景写真は主として六切や四切の大判カメラで撮影された。これらの撮影レンズの焦点距離など諸条件を検証するため、特注で11×14インチ(大四切判)のカメラや付随するホルダー(取り枠)、また古い時代のレンズを使用するためのレンズボードなどを製作したのは平成20年度で、21年度にかけ長崎や熊本、下関などで再撮影を行い当時の写真撮影の光学諸条件を考察した。 本年度もさらに再撮影を継続し、伊勢、箱根、東京などで撮影調査を行った。伊勢での撮影は、明治5年の天皇西国巡幸に同行した内田九一が撮影した"内宮石段下"や"宇治橋"に基づいた再撮影である。昨年は長崎で、この巡幸の際に内田九一が撮影した"飽の浦からのパノラマ"に基づいた再撮影を行い、用いられたレンズは約260mmという短い焦点距離であったことが判明している。今回の伊勢での撮影は、比較対象が少なかったため正確な計算はできなかったが、ほぼこの焦点距離であることが確認できた。箱根および東京(愛宕山)での撮影調査は、幕末明治初年の写真家ベアトによる写真に基づく再撮影である。これまでの調査で、ベアトが使用したレンズは500mmの焦点距離であることが明らかになっているが、"箱根神社石段下"、"箱根鞍掛山"、また"愛宕山石段下"などの再撮影でこれをさらに確認することできた。"愛宕山からのパノラマ"については、撮影場所は特定できたが、周囲のビルなどで見渡しがきかず撮影がほとんどできなかったのは残念である。 また本年度は、米国ニューヨーク州ロチェスターのイーストマンハウス国際写真博物館において調査研究を行った。とくに湿板写真をはじめとする19世紀写真技術と機材の世界的な専門家であるオスターマン氏とともに湿板写真術の実地研究を行い多くの知見を得ることができた。これに基づき大判の四切サイズの湿板写真の撮影実験を進めたが、幕末明治期の撮影現地での湿板撮影は今後の課題となった。
|