平成22年度はおもに、テレビの放映が幼児の食行動に与える影響を検証した。食事は日々繰り返されるものであるがゆえ、多くの養育者にとって、どのような食事場面をもつかは日々の重要な課題となる。申請者の実施した、離乳期の子どもをもつ母親への質問紙調査からも、「どのような社会的・物理的環境のもとでなら、子どもはよく食べてくれるのか」という点に、多くの関心が寄せられていた。しかしこの点に関する実証的研究はほとんどない。 本研究では、テレビを設置した実験室内で、被験児に食物(ランチプレート)を30分間自由に食べてもらった。その後、摂食量を測定したほか、表情カード(嬉しい・悲しい)をもちいて食事にたいする感想をたずねた。同じ被験児にたいして、食事中にテレビ放映がある条件とない条件の2回観察をおこない、摂食量や嬉しい度を条件間で比較した。被験児は2~6歳齢だった。食事中にテレビを放映した場合としない場合では、放映した場合に摂食量が少なく、食事にたいする嬉しい度が低い傾向があった。テレビ放映がある場合に食事への嬉しい度が低かった原因の1つとして、テレビ放映に夢中で食べられず満腹感が低いことが考えられる。しかし、摂食量が少ないと嬉しい度が低いとも限らなかったため、食事にたいして感じる嬉しい度には、満腹感とは別の要因が少なからず作用すると考えられた。これらの結果は、幼少期においても、子どもの食事環境に配慮する必要性を示す。
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