研究概要 |
クロロフィル由来物質であるマレイミド類を堆積層の柱状試料から抽出し分析することにより光合成生物量の時間的変化を解明する方法を確立するために以下の研究を行なった。 1.クロロフィルの代謝及び酸化産物である遊離態の2-エチル-3-メチルマレイミドを霞ヶ浦と手賀沼の堆積物から分離,定量を行った。これによりこの物質の湖沼堆積物中での存在を明らかにし,分離・定量の手法を確立した。 2.手賀沼堆積物のクロム酸酸化抽出により,エチルメチルマレイミド(結合態と称する)を分離,定量した。これにより堆積層のクロロフィル量の簡便な定量法を新たに提案した。 3.クロロフィルのB環以外のピロール部分から生成すると考えられるマレイミド類の標品の合成を行なった。即ち,ジヒドロヘマチン酸メチル,2-メトキシカルボニル-3-メチルマレイミド,2-メトキシカルボニル-3-エチルマレイミド,2-メトキシカルボニルエチル-3-メチルマレイミド,2-メトキシカルボニルビニル-3-メチルマレイミドの合成法を確立した。これによりクロロフィルbとcの個別定量の為の標品などが得られた。 4.現世堆積物の柱状試料を採取した後,凍結保存し分割する技術的手法を考案した。 5.堆積岩試料より得た結合態マレイミド類とフタルイミド類を利用した新たな地層有機物の熱熟成度指標を3種類見い出した。即ち総マレイミド類対総フタルイミド類比,メチルフタルイミド異性体比及びエチルフタルイミド異性体比がビトリナイト反射率と良い相関を示すことを見い出した。これらは簡便に求めうる指標として有用である。
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