今年度は龍笛、能管、箏、三味線にテーマを絞り、調査をおこなった。 龍笛については彦根城博物館が所蔵する51管のうち古管と思われる12管、能管については野村美術館所蔵の5管、森田光春師旧蔵の2管、藤田大五郎師旧蔵の2管を調査し、このうち彦根城博物館、野村美術館、森田光春氏旧蔵楽器についてはX線透過撮影も行った。その結果、彦根城博物館の「花鳥丸」は頭部の節を抜いていないこと、「斑鳩丸」は頭部に切断箇所がなく、一材で製作していることが判明した。いずれも古管の特徴である。 野村美術館の「龍丸」は伊達家伝来、「柴笛」「獅子」「関寺」は森田流伝来と伝えのある笛で、いずれも樺が緻密に巻かれた姿の美しい笛である。「龍丸」は劣化が進んでいたが、X線透過撮影の結果、「柴笛」と「獅子」、「関寺」と「龍丸」の製法がきわめて近いことが判明した。龍笛及び能管の調査結果は紀州徳川家楽器コレクションの楽器と比較し、「紀州徳川家蔵楽器コレクションの調査報告」と題して、東洋音楽学会第60回大会で口頭発表した。 三味線については、早稲田大学演劇博物館が所蔵する14点、山口県柳井市小田家博物館が所蔵する7点、及び杵屋佐吉師が所蔵する古三味線野路(伝古近江作)、日吉小三八師が所蔵する古三味線について調査を行い、江戸期の三味線が、現在より棹がかくだんに細いことなどを確認した。調査成果の一部は、研究協力者野川美穂子が『まるごと三味線の本』の中で紹介した。箏については、京都霊鑑寺所蔵の短箏、徳川美術館旧蔵の短箏について調査をした。
|