研究課題/領域番号 |
20520150
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研究機関 | 独立行政法人国立文化財機構東京文化財研究所 |
研究代表者 |
高桑 いづみ 独立行政法人国立文化財機構東京文化財研究所, 無形文化遺産部, 無形文化財研究室長 (60249919)
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研究分担者 |
犬塚 将英 独立行政法人国立文化財機構東京文化財研究所, 保存修復科学センター, 主任研究員 (00392548)
松島 朝秀 東京農工大学, 科学博物館, 助教 (60533594)
野川 美穂子 東京芸術大学, 音楽学部, 非常勤講師 (50218294)
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キーワード | 芸術諸学 / 日本音楽 / 楽器 |
研究概要 |
龍笛・能管・三味線について継続調査をおこない、3年間の調査の総括として成果報告書を刊行した。 龍笛については彦根城博物館が所蔵する6管と土佐山内宝物資料館蔵の1管、能管については寺井久八郎師蔵の9管、毛利藩旧笛役者由良家旧蔵の1管、土佐山内家宝物資料館蔵の6管、三井記念美術館蔵の2管を調査し、X線透過撮影も行った。その結果、龍笛にとっていちばん大切な歌口から第1指孔にかけての内部はできるだけ原形を残すように努めていることが判明した。修理をする際も、よほどの劣化がない限りこの部分に別材を挿入することはない。龍笛の修理から能管が派生した、という巷説は推測の域にとどまる可能性が強くなった。能管については、X線透過撮影の結果に従い、歌口と第1指孔の間に挿入する別材「ノド」の形状に従って分類を試みた。その結果、桃山時代の武将が所有していると伝えのある能管ほどノドの材が太く、内径をなめらかに絞っており、江戸時代以降に製作された能管になるとノドの材が薄くなり、内径の絞り方が緩くなる傾向が見られることが判明した。明治2年に著された『横笛試律便覧』では竹材をたてに割き、内側を外に返して組み合わせる返シ竹の技法を宜竹の案としていたが、X線写真を見る限り、返シ竹の技法は確認できなかった。調査した中には明和年間に徳川幕府に提出された『銘管録』に載る名器も多く含まれていたが、作者による作風の違いも明確にはできなかった。龍笛からの改造説を含め、作者や製法についての通説を再考する余地が大きい。三味線については、芳村伊十郎師蔵の2点、さいたま市立博物館寄託の1点について調査をおこない、江戸期の三味線が、現在より樟が各段に細いことなどを確認した。
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