T.S.エリオットの詩劇再読・再評価が本研究の主目的であった。先行研究を踏まえた上で、エリオットの詩劇が著作全体の中でいかなる位置づけにあるかを確認し、詩劇作品が彼自身の詩世界や評論・文化論、さらには共同体に生きる人々とも有機的に繋がっていることを示し、エリオット詩劇の全体像をとらえることができた。 平成21年度に学位を取得した論文「T.S.エリオット詩劇と共同体再生への道筋-世俗的日常世界と宗教的世界の境界を挟んで-」を踏まえて、平成22年度は下記の作業を行ない、本研究の締めくくりとした。 (1) エリオットの代表的詩劇The Cocktail Partyを取り上げたシンポジウム「60年目の『カクテル・パーティ』再読」(平成21年度)における成果を論文にまとめ、エリオット詩劇の全体像における本詩劇の位置づけを確認して、学会誌に発表した。 (2) 学位論文を1冊の著書として公表する前段階として、『モダンにしてアンチモダン-T.S.エリオットの肖像-』の分担執筆に加わり、エリオットの詩劇について総論部分を担当した。 交付額の半分を旅費に充てたが、これはT.S.エリオット協会の全国大会に参加し、第一線における研究成果の共有を図るためであり、有意義であった。 本研究に科学研究費補助金を受けることができ、エリオットの詩劇全体についての総合的な研究成果を収めることができ、大変ありがたかった。今後は、その成果を一冊の著書として公表する作業に取りかかる。
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