研究課題
平成22年度は研究計画に基づき、関連資料が収蔵されている中国・ロシアの各機関で資料分析を行った。中国遼寧省文物考古研究所、同吉林省文物考古研究所、同黒竜江省文物考古研究所で実施した。遼寧省文物考古研究所では、主に鮮卑の資料を実見した。吉林省文物考古文物研究所では、前年に引き続き、泡子沿類型の資料を中心に渤海の資料の実見・観察を行った。黒竜江省文物考古研究所では、靺鞨成立前の東康文化、東興文化、河口遺存、滾免嶺文化、鳳林文化の資料、靺鞨初期にあたる同仁遺跡の資料の実見・観察を行った。本年までの調査で、本計画に挙げた極東地域の靺鞨成立前の各文化と靺鞨初期の資料は概ね実見できたことになる。暫定的な分析結果としては、ロシア・アムール流域では靺鞨罐前代から成立にかけて系統的連続性が高い一方で、中国領内の多くの地域で両時期の土器型式には大きな断絶が認められた。アムール流域における初期鉄器時代~靺鞨への系統と靺鞨罐の成立、他地域へ拡大する、という過程の資料的な裏付けができた。前年までの研究成果を踏まえ幾つかの論文の公表・発表を行った。上記した靺鞨罐の成立過程の推測について中間報告的な論文を公表した。本研究で示した土器編年と地域間関係は今後の基礎資料と考える。また諸集団を統べた靺鞨の成立は極東古代の大きな変動であり、その影響は、北海道に及ぶ。この現象は既に大きな注目を浴びてきたが、大陸部と北海道の中間地帯にあたるサハリン、アムール河口の資料検討が不十分で、影響伝播の具体像は不明のままであった。申請者は、近年の調査成果を渉猟しながら、大陸から北海道に影響が及ぶ過程について纏め、発表を行った。この発表は次年度以降論文として公表予定である。またこれまで行ってきた靺鞨罐成立前から渤海、遼、金までの極東地域の考古学的様相の概説やロシア沿海地方における金代城郭の集成報告も発表した。
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考古学ジャーナル
巻: No.605 ページ: 18~21
古代文化
巻: 第62巻1号 ページ: 148-150