本研究では、6世紀後半に前代からいた諸集団を統合し、ロシア極東・中国東北部全域に住地を広げた「靺鞨」族の様相とその成立過程について考古学的に解明しようとするものである。靺鞨族の成立時には、同族が使用したとされる「靺鞨罐」と呼称される土器が極東全域に斉一的に広まる。本研究では、この靺鞨罐と靺鞨罐成立以前(初期鉄器時代)の土器資料を分析対象として、各地域における在地土器の製作伝統がどのような変遷を辿り、靺鞨罐が形成されるに至ったか、そして地域毎の靺鞨罐の分析を通じて広域に渡る当時の地域間関係を検討することを目的とする。またこの作業を通じて極東地域の当該期の広域編年の確立を目指す。
|