20年度においては、わが国における当事者訴訟としての確認訴訟(以下、確認訴訟)の対象如何に関して議論があることを念頭に置いて、この問題の参考に供するために、確認訴訟に相当するドイツでの行政訴訟の類型が一般的確認訴訟(以下、一般的確認訴訟)であることを明らかにし、これを前提に、この訴訟の対象がどのように考えられているのかということを、連邦行政裁判所の裁判例を主な検討素材としながら考察した。 具体的には、ドイツの一般的確認訴訟の対象として、法律関係のほかに、行政の行う行為(行政措置)そのものが対象となるのは、わが国の学説が説くのと異なり、きわめて例外的であると考えられる。すなわち、行政行為の違法確認については、事後的確認訴訟に関する規定(行政裁判所法一一三条一項四文)を準用する裁判例が圧倒的であり、一般的確認訴訟として扱った裁判例は、一件を確認したに留まり、それもきわめて特殊な状況下におけるものであった。また、行政行為以外の行政の措置の違法確認についても、連邦行政裁判例は、行政措置の違法確認という原告の請求を法律関係の請求に読み替えて、これを一般的確認訴訟として許容するものがほとんどであった(この点でも、1件の例外的な裁判例を確認できたに過ぎない)。 学説上、こうした連邦行政裁判例に対しては、強力な異説があるものの、少数説に留まる。その理由として、判例および学説上、法律関係の概念が相当緩やかに解されており、これに相応して一般的確認訴訟の対象が広く捉えられる結果、行政措置そのものを直接確認訴訟の対象とする強い理由がないと解されている、と推測しているが、この点を含めて、法律関係の問題は次年度の課題である。
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