本研究の目的は、民法の条文および判例・通説において認められている契約解除権の要件たる解除原因を分析し、そこから各解除原因に共通する要素を析出し、契約解除法に通底する根本思想を見出すことである。このような目的を達成するため、平成21年度は、次の手順で研究を進めた。 平成21年度は、前年度に収集した文献を精査することを中心としつつも、引き続き、研究対象に関する日本法およびドイツ法についての基礎的な文献の収集および精査を行った。とりわけ、平成21年にはわが国における債権法改正の基本方針が公表されたため、これに関連する文献の収集を行った。国内の研究機関等において入手が不可能またはきわめて困難な文献のうち、ドイツ債務法に関する文献については、平成21年8月にドイツに赴き、収集を行った。 このようにして入手した基礎的文献を精読し、わが国における契約解除法の基礎的な考え、およびドイツ法における法状況について把握し、整理を行った。 上述のように、わが国における債権法改正の基本方針が公表され、そこにおいてわが国の解除規定に関する一定の方向性が打ち出されたため、本研究において、この方向性の妥当性、そこで提示された規定(案)の当否について検討し、一定の応接を行う必要性が生じた。すなわち、当初の研究計画は、現行規定を前提とした解釈論の提示に力点を置いたものであったが、一定の立法提案ないしその前段階の方向性が明示されたため、本研究においてもこれに応接し、一定の立法論を展開する必要が生じた。このため、当初の研究計画の力点をやや後者に移しつつ研究成果をまとめる方針を立て、これに即して文献の収集および精査を行った。
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