研究概要 |
昨年度(平成20年度)は関連する理論・実証研究のサーベイを行うと同時に,アジア諸国の部品貿易についてのデータ作成と暫定的な分析に多くの労力を割いた。具体的には国連の貿易統計を基礎にHSコードとBECコードを対応させ,10産業の部品貿易のデータをGDP、為替レート、輸送費等、各国のさまざまな経済変数、そして2通りの直接投資データを収集し、部品貿易データと合体させた。直接投資データのひとつはUNCTADの国別直接投資データで、一国単位の直接投資受け入れ蓄積額である。もうひとつは日本の直接投資件数ならびに雇用者数のデータで東洋経済新報社のデータベースから取られている。これらのデータは直接投資データを除けば、アジア諸国で部品貿易が急増し始める1980年から最近年の2005年までをカバーしている。 この暫定データを使用して、東・東南アジア諸国は部品貿易の構造において北米やEUの他の地域と異なるかどうかをテストした。その結果、レベルで見ても全貿易に占めるシェアでみても東・東南アジア諸国は他の地域以上に多くの部品貿易を行っていることが統計的に確認できた。さらに各国の直接投資データを使用し、東・東南アジア諸国では直接投資が大きな役割を担っていることを統計的に確認した。 これらの暫定的な結果をTrade Structure of Parts and Components in the World Economy-Is East Asia unique?-としてまとめ、2008年6月アメリカのホノルル市で開かれた西部経済学会と、さらにその改訂版を2008年11月、フィリピンのマニラ市で開かれた東アジア経済学会において報告した。これら2つの学会報告からはきわめて有益な多くのコメントを得ることができた。
|