本研究の目的は、日本企業がグローバル化に対応するために、海外のビジネススクールでMBAを取得した日本人社員をどのように活用しているかを明らかにすることである。平成20年度は、先行研究のサーベイと日本人MBAホルダーへのインタビュー調査の実施を計画していたが、研究はおおむね計画通りに進んだ。先行研究については、国内外のジャーナル、書籍、新聞、雑誌などの文献を幅広く収集し、それらの概要を整理した。文献サーベイはまだ十分ではなく、引き続き行う必要があるが、本研究は先行研究例が少なく先駆的な意味合いが強いため、これらのデータは国際経営論や国際人的資源論の研究分野において、重要性が高いと考える。インタビューは、おもにアメリカやヨーロッパのビジネススクールでMBAを取得して帰国後、10年程度を経過した日本人ビジネスマン数名を対象に行った。仕事で多忙な人が多く、インタビューの承諾を得るのは容易でなかったが、一人当たり2時間以上をかけてかなり綿密なインタビューを実施できた。企業経営者に対してもインタビューを行ったが、時間が足りず、あまり突っ込んだ内容のデータを得ることはできなかった。インタビューを通じて、日本企業がMBA人材を十分に活用できていないこと、また、MBAホルダー自身が従来型の日本企業の経営のあり方に疑問をいだきながらも、必ずしも外資系などに転職した結果、仕事に満足感を抱いているわけではなく、いわゆるドリフト感を強く持っていることなどが明らかになった。これらの知見は、従来の研究では注目されなかったものであり、これらについて実証的なデータを蓄積することは意義が大きいといえる。
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