今年度は平成20年度からスタートした本研究課題の最終年度にあたり、これまでの研究のまとめとして主に以下3点を中心とする調査研究および文献研究に取り組み、研究成果の集約を行った。 一点目は、前年度から取り組んでいるA市のホームレス自立支援事業に関する調査を今年度も継続して行い、その結果を調査報告書にまとめた。主な内容は(1)A市保護所入所経験者アンケート、(2)A市保護所の月報からみた利用実態調査、(3)A市「平成20年度ホームレス状態から居宅確保した者等の状況調査」及び「平成20年度ホームレスから居宅保護以外の措置を行った者等の状況調査」の調査を行い、その分析を行った。このうち特に(3)の「平成20年度ホームレスから居宅保護以外の措置を行った者等の状況調査」では、最終的な措置が「無断退所など行方不明扱いのため保護廃止」が半数弱(42.0%)を占める状況が明らかになった。保護廃止の内容は(1)生活保護施設→行方不明、(2)病院入院→行方不明、(3)自立支援センター→行方不明などである。一方で「自立のため保護廃止」は12.3%であった。A市では居宅保護以外の措置がなされた場合、再野宿化につながる可能性が高い状況が明らかとなった。 二点目は戦後労働政策の展開と90年代以降の労働市場の規制緩和、非正規雇用の拡大に関する歴史的研究に取り組み、その一部は研究論文にまとめた。三点目は、近年におけるワークフェア政策の現状と問題点について検討を行うため、今年度はフランスを訪問し、就労インセンティブを強めるため2009年に制度変更された公的扶助としてのRSAや失業扶助制度に関してヒアリングを実施した。
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