本研究は、福祉施設現場における現場専門職者を対象とした死生学教育プログラム開発と実施を目的とする。平成17年度より厚生労働省が介護保険での「看取り加算」を認めたことから、多くの特別養護老人ホーム(以下特養)が施設内看取りに積極的になっている。しかし、現場では目の前で起こる人の死をどう受け止めるかについて、死生観教育がなされておらず、多くの福祉専門職者は無力感からバーンアウト(離職)してしまう。この傾向は熱心なスタッフほど高い。その結果、サービスの質が低下し、高齢者のQOLが低下するという悪循環が起こっている。このような状況から特養現場では、死生学教育に対するニーズが高まり具体的プログラムが求められている。本年は4年計画の初年度として、プログラム開発のための基礎調査を行った。具体的な内容は次のとおりである。(1)フォーカスグループによるニーズ調査:特養の福祉専門職者を対象としたフォーカスグループにおいてニーズ調査を行った。参加者は、看取り介護をしている特養職員、看取り経験のある経験年数3年以上の職員とし、異なる施設・職種(福祉士・介護・看護・施設長)から8名。フォーカスグループでは、具体的看取り場面において不安な点(主観的客観的問題点)、必要とするサポート、自分自身の死の受け止め方、これまでに受けたターミナルケア教育、これまでの看取りの経験から学んだこと等についてディスカッションを行った。(2)特養職員の看取りニーズの分析:フォーカスグループから出されたニーズを、個人的ニーズ、対人関係(対利用者・家族)ニーズ、対施設ニーズ、教育的ニーズなどのタイプごとに分類した。これによって、死生学教育が焦点を当てるポイントが明確にされた。これをもとに21年度は、特養における死生学教育プログラムの開発(たたき台)を開発する予定である。
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