平成21年度は、兵庫県立神戸第一中学校の個票データベースを分析し、「実業層」の学校利用と再生産戦略が実際にどのように結びついていたのか、その構造的な解明をする。その方法として学籍簿・参考簿の項目をデータベース化しなければならない、そのため平成21年度はこの作業に時間を費やすこととなった。本年度は参考簿をメインにデータ入力を進めた。個票データを用いた分析の多くは、分析の遡及可能性、再現性に対する配慮がほとんど行われていなかったといえる。そのため我々は、参考簿をデータベース化する際に、まずデータを入力する事項を確認し入力するために決まり事を設けなければならなかった。それは年代ごとに簿冊表の形式が異なっており、記入すべき項目も増減していたからである。さらに個表にある項目の家族構成、現住所、入学以前の経歴等は特に注意しなければならなかった。なぜなら、これらの項目は、常に変動する項目であったからである。例えばある生徒の現住所が移転すれば以前の住所は線で削除され、その削除された住所の横に新しい住所が書き加えられていたからである。このような一個人が移動したという足跡は、地域移動の分析対象となる。つまり書き換えられる以前の記述と、新しく書き加えられた記述をデータとして判別できるように入力する作業は、重要な作業となるのである。入力作業をするグループでこれらの注意点を確認し、参考簿の入力作業を進めていった。結果、明治後期から昭和初期(1905~34)にかけての兵庫県立神戸第一中学校の学籍簿・参考簿等の薄冊等と同窓会誌(個票)の入力作業の8割を完了させ、データベース分析にむけ準備を整えることができた。
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