研究概要 |
本研究は,フェアトレードというグローバルな社会的事象の持つ意味,背景を経済学的,社会学的に明らかにした上で,フェアトレードを題材とした社会科公民教育の学習モデル開発を行うことを目的としている。平成20年度においては,フェアトレードに関してコーヒーを題材として経済学的,社会学的分析を中心に研究を進めた。 経済学的分析としては,グローバル化した国際経済における先進国と途上国との貿易については,比較優位の概念を用いてその有用性が説明されるが,実際には先進国と途上国の経済格差は拡大していることを踏まえ,この要因として考えられる取引価格が途上国での生産の必要な費用(例えば環境保全コストや労働コスト)を含んだものではない,つまり取引価格の反映されない外部不経済が発生していることについて,コーヒー貿易を題材にして分析を行った。社会学的分析としては,コーヒーの生産から消費に至る一連のプロセスのなかで,モノとヒトとの関わりを描き出しながら,フェアトレードの定義に含まれる,公正な利益の配分,環境配慮,文化的なアイデンティティの保持などの要件が,「誰にとって」「何のための」要件であるのかを考察した。また、このような知の枠組みが,援助する側/される側の非対称な力を拭いされないものから両者が対等な関係に立つうえでの必要な「知」足りえるか,論点を整理した。また,本年度はタンザニアでのコーヒーの栽培から輸出に至る過程について現地調査を行い,上述の研究について現実にはどうなっているのかという視点からの検証も行った。
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