研究概要 |
本研究は,フェアトレードというグローバルな社会的事象の持つ意味,背景を経済学的,社会学的に明らかにした上で,フェアトレードを題材とした社会科公民教育の学習モデル開発を行うことを目的としている。平成21年度においては,平成20年度に実施したフェアトレードの経済学的,社会学的分析をベースにさらに研究を進め,フェアトレードを題材とした社会科公民教育の学習モデル開発に着手した。 具体的には,フェアトレードの理念が一般市民にどの程度浸透しているのか,またその理念が実際の購買行動にどのくらい結びついているのか等を明らかにするため,京都市の1000世帯に対してアンケート調査を実施した。その結果,フェアトレードの理念はある程度理解されているものの,それが実際の購買行動にはあまり結びついていないこと,およびフェアトレードの根幹であるフェアな取引価格が同類の製品の市場価格に対して割高なことにその要因があることが明らかになった。さらに,フェアトレードの定義に含まれる,公正な利益の配分,環境配慮,文化的なアイデンティティの保持などの要件が,「誰にとって」「何のための」要件であるのかを考察した。また、このような知の枠組みが,援助する側とされる側の非対称な力を拭いされないものから両者が対等な関係に立つうえでの必要な「知」足りえるか等について論点を整理した。 上記の分析内容を踏まえ,今年度はバングラデシュで現地調査を実施し,フェアトレード商品の生産者がフェアトレードをどのように捉えているのか,我々がよいと思ってしていることが生産者にとってはどのように捉えられているか等を検証した。また,英国のヨーク市においてフェアトレードタウンの現地調査を実施し,英国におけるフェアトレード普及の要因等を検証した。
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