研究概要 |
本研究の目的は,道徳的綱断を適切に下すうえで不可欠である非単調的な推論の能力を高めるようなプログラムを構想することにある。そして,世の中には多様なものの見方や価値観があってよいということが,どのような価値観をもってもよいということを意味するわけではなく,いったん特定の前提を採用したときに許容されるものの見方や価値観は限られてくるということの十分な理解を通じて,責任感のある人材を育成しようとするものである。 そうした目的のために,平成21年度は,主として次のような取り組みに従事した。 1. 前年度の調査や研究の成果を踏まえ,研究分担者である新茂之氏とのあいだで,学習者に非単調的な推論を促していくような,具体的な道徳教材例の形を明確にするための検討会を数回行った。 2. 非単調的推論の産物としての道徳的判断の本質的特徴を考察していくための文献や,道徳的判断力を養うための教育的かかわりに関係すると思われる文献や,学習者が抽象的な事柄を具体的な日常の事柄と関係づけてイメージできるような方策を提供してくれると思われる教育関係の文献を奴集した。それによって,道徳教材例の作成のためのヴィジョンを形づくるのに役立てている。 3. 上越教育大学において道徳教育を専門的に研究されており,また,現職教員に指導・助言を行っておられる林泰成先生をお招きし,こんにちの道徳教育的実銭の現状や傾向などに関して情報提供いただくとともに,本研究での構想を現実化していくうえで留意すべき点などに関して助言いただいた。 4. こんにちの学習者の傾向や,学校の抱える問題などを踏まえるために,岡山県下の現職教員の方に出張いただき,意見交換の機会をつくった。
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