20年度は2つの事項に集中した。 (1) Looiengaによる写像類群の表現ρについて、その像の大きさを上から評価する事 : この表現の像Im(ρ)は定義から、ある実代数群の格子群Γになるが、申請者はこれが全射であるための障害を代数的K群を用いて定義した。もしこれが無限位数ならば、Γの特性類Φを包含写像でIm(ρ)に引き戻したもののグロモフ・セミノルムについて非自明な評価が期待できる。さて「障害」の計算において純代数的なステップの実行がなかなか難しく、そのためそのの非自明性すらまだ証明できていない。「障害」は非可換群のまさにその非可換性に寄りかかって定義されており、具体的計算以外にうまく評価する方法がいまのところ見当たらない。計算機にのるようなアルゴリズムを与えるのが先決ではないかとも考えている。 (2) 写像類群のすべての森田・マンフォード類が有界であることを示す試み : エルミート型対称空間のカノニカルなケーラー類ωは有界であることが既に良く知られており、そのグルモフ・セミノルムの具体値も判っている。この先行研究を一般の有界領域に拡張する方向で、写像類群のコホモロジー類の有界性を示すアブローチについて検討した。その結果、第1番目の森田・マンフォード類を表すコサイクルを一つ得た。このコサイクルがウェル・ディファインドであることは全く自明ではなく、それを示すためにはリーマン面のモデユライ空間(のコンパクト化)に関する深い結果を援用する必要がある。またこのコサイクルが有界かが非常に興味深いのだが、それは今後の課題である。
|