写像類群M_gの有界コホモロジーについて研究した。特につぎのような構成をM_gに応用して得られるM_gの表現について考察した : 群Gが有限CW複体Xに(up to homotopyで)作用するとせよ。さらに有限群Tを被覆変換群とするXの被覆Wがあるとする。WにはGのTによる拡大Pが作用し、準同型ρ : P→Aut(H^*(W ; Z))を得る。Aut(H^*(W ; Z))におけるρ(T)の正規化群をN(T)とおけば準同型τ : G→N(T)/ρ(T)を得る。M_gの第1MM類e_1のグロモフ・セミノルムを(2g-2)で割った値の、gを無限大に飛ばした時の極限μを考える。このとき一般論から、閉曲面上の種数2以上の閉曲面束Eについて、その符号数の絶対値σとオイラー数χの間に不等式3σ≦μχが成り立つ。そこで定数λを、底曲面の種数が2以上の全てのEに関する3σ/χの上限、とおけば明らかにλ≦μである。λ=1とμ<6を予想し考察した。この問題は閉曲面束Eのトポロジーの話だと思えるが、Eは何回かブロー・アップするとレフシェッツ束の構造を持つと知られているから、最初から球面上のレフシェッツ束Fの問題と考えてもよい。一方、野坂武史によれば、(n本の特異ファイバーを持つ)レフシェッツ束の同型類全体は、球面とその上のn個の点から決まるカンドルS_nから閉曲面のデーン・カンドルD_gへのカンドル準同型の同値類全体と1対1に対応している。またM_gのある中心拡大を係数とするカンドル2-コサイクルは符号数の情報を持っている。これを踏まえ野坂の仕事をコンパクトな境界付き曲面のデーン・カンドルに拡張できるか、またデーン・カンドルの整係数コホモロジー群が符号数の情報を持っているかどうかについて予備的考察をした。
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