研究概要 |
1970年代に現れたQuillen,Sullivanによる有理ホモトピー論は,可換微分代数が作るモデル圏での対象,射の具体的表記を用いて幾何学及びトポロジーの問題を代数的問題に帰着させ,例えば測地線の無限存在問題等,多くの問題を解決してきた。また一方,写像空間によるホモトピー論は値域空間に内在する性質を効果的に捉える術を提供してきた。実際Lie群の分類空間の自由ループ空間のコホモロジー環は,Lie群の特性類間に在るSteenrod作用素による相互関係を強く反映し決定される。 本研究においては有理ホモトピー論を駆使することで,今まで取り扱いが困難だった写像空間のトポロジー的考察を進展させ,多様体のトポロジー的性質の解明に力点が置かれる。具体的な目標は,Brown,Szczarbaによる写像空間の有理モデル(B-Sモデル)と研究代表者により構成された評価写像モデルを用いて次の3つの問題を考察することである。 (1)連結な等質空間M=G/H上の自己ホモトピー同値写像のつくるモノイドの恒等射連結成分aut_1(M)を考える。このときGのaut_1(M)における有理可視化問題。すなわちGのMへの標準的作用が誘導するGからモノイドaut_1(M)への写像が有理ホモトピー群上でどのような場合に単射になるかの考察。 (2)c-シンプレクティック多様体Mに対して得られる分類空間Baut_1(M)の特性類であるKedra-McDuff類のB-Sモデルによる解釈。 (3)シンプレクティック多様体(M,w)をファイバーにもつファイブレーションにおけるシンプレクティック類[w]の全空間のコホモロジー類への拡張問題
|