研究概要 |
半分線形楕円型方程式とは,解の定数倍もまた解であるときを意味するが,特に主要部がp-ラプラシアンである準線形楕円型方程式を研究した.今までの方程式を含むようなより一般的な楕円型方程式に対して,Picone等式を確立し,それを用いてSturm型比較定理を得た.また,その比較定理をもとにして,解の零点が無限遠に存在するための結果,即ち振動定理を確立した.また,中立型常微分方程式で,非線形項の係数が正,負の両方を持つ場合に対して,全ての解が振動するための十分条件を得ることができた.これは従来の結果を一般化したもので,外力項を含んでいる場合も考察した. 国際研究集会「Fifth World Congress of Nonlinear Analysts 2008」が2008年7月2-9日まで米国のOrlandoで開催された.その研究集会で「Sturmian comparison and oscillation theorems for a class of half-linear elliptic equations」の題目で招待講演を行った.この研究集会のProceedingsは雑誌「Nonlinear Analysis」に掲載予定である.この大規模な研究集会では,様々な国の数学者と交流ができ,また最新の研究成果を得ることができ,大変有意義な海外出張となった.富山解析セミナーでは,「半分線形楕円型方程式に対するPicone等式とその応用」という題目で講演を行い,参加者,特に富山大学理学部数学科の卒業生で現在数学者の方々と研究交流できたのは,大きな収穫であった. 海外の出版社World Scientific Publ. Co. Ltd.から「Oscillation Theory of Partial Differential Equations」のタイトルで偏微分方程式の振動理論の集大成ともいうべき学術書を出版できた.この本は,今までの1955年依頼の論文をもとに,偏微分方程式の振動理論としては最初の単行本であると思われる.この本により,この分野の理論が大きく発展し,また,新しい研究者が生まれ,この理論を発展させてくれることと確信している.
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