研究概要 |
非線形方程式における解の有限時刻での爆発現象あるいは集中現象などの特異性の発現の背後に、自己相似性というスケール不変性がしばしば見られる。本研究では、非線形放物型偏微分方程式に対して、自己相似性という観点から解の特異性についての考察を行った。とくに本年度は、Sobolev臨界指数増大度をもつ非同次定常問題の解の構造について中心に研究を行った。 非線形項がSobolevの埋め込みの意味で臨界的な増大指数をもつ非線形楕円型偏微分方程式の正値解の構造について考察を行った。分岐理論、比較定理による優解・劣解の方法により最小解の存在を示した。とくにパラメータに関して単調な最小解の存在を示すとともに、それら最小解属の極値解(extremal solution)の存在および正則性についても考察を行った。非線形問題の極値解の存在・非存在は、非線形性、領域の空間次元、幾何学的条件に依存すること、および対応する放物型問題の解の挙動に大きな影響を及ぼすことが知られている。 さらにSobolev臨界指数増大度をもつ非同次定常問題の非最小解の存在・非存在について考察を行った。とくに非最小解と最小解の差を考えることにより解の多重性に関する考察を行った。適当な汎関数に対して変分的手法を用いることとPohozaev型の恒等式を用いることにより、非線形項がSobolev臨界指数増大度をもつ場合には、正値解の解構造が本質的に空間次元に依存することを明らかにした。とくに空間次元3,4,5と6以上において解の多重性が変化することを示すことができた。これらの定常問題の解構造は、放物型偏微分方程式の初期値問題の解の漸近的性質の考察において、重要な働きをするものと予想される。
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