研究概要 |
本研究は,富栄養化した海域において,粒度分布データが有する情報量を最大限に活用し,新たな底泥の分析手法の提案,底泥の輸送および分布範囲を推定する手法を検討することを目的とする.本年度は,過酸化水素水処理により有機物が除去された底泥の粒度分布データに着目した.また,底泥の分布範囲を推定する新たな底泥指標として,化学組成に着目した. 有機物が除去された結果,京浜運河内(164地点)の殆どの地点の粒度分布は,シルト成分が卓越した形状から,シルト分が減少し砂のモードが明瞭な粒度分布に変化した.その砂成分のモードに対して,エントロピー法を用いて京浜運河内の底泥のグループ化を行った結果,京浜運河の底泥分布は3つの領域に分けられた.一方,底泥の分布範囲を推定する新たな底質指標として,化学組成の導入を試みた.各底泥を63μm以下のシルト成分と63μm以上の砂成分に分割した後に,それぞれに対して化学組成分析を行った.砂成分の化学組成比に基づいてグループ化した底泥分布の結果は,粒度分布に基づくグループ化で得られた底泥分布と良く一致した.この両者の底泥分布の一致は,両指標共に底泥の分布範囲の推定に活用できる指標であることを示した.また,この砂分の底泥分布のグループ化の結果,シルト成分の化学組成に基づく底泥分布のグループ化の結果および有機物を除去した粒度分布データの結果を合わせて考察することによって,京浜運河内における砂成分およびシルト成分それぞれの分布範囲の特徴を定性的(由来に関する情報)かつ定量的に示すことが可能になった。
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