平成22年度は、平成21年度までの実験結果に基づき、以下の検討を行い知見を得た。 ○強制乾燥試験結果を考慮した既存建築物のひび割れ原因推定手法の検討 平成21年度までの実験結果に基づき、乾燥収縮ひずみを予測する数値シミュレーションモデルの作成を行った。本モデルは、乾燥収縮ひずみがコンクリートからの水分逸散に起因するものとし、コンクリート内部の含水状態を計算し、その結果から乾燥収縮ひずみを算出するものである。なお、本モデルは、コンクリートだけではなく、仕上材を施工した場合でも適用できるものとした。その結果、仕上材を施工した場合、初期は水分移動が抑制されるが、4年程度で仕上材がないものと含水状態が変わらなくなること、そのため、最終的な乾燥収縮ひずみは、仕上材の有無・種類によらず、コンクリートの乾燥収縮ひずみに依存すること、北海道における一般的な室内環境下では、恒温恒湿室の条件よりも乾燥収縮ひずみが進行しやすい条件となっているが、進行しやすさはコンクリート自体の乾燥収縮ひずみに依存すること等の知見を得た。 ○壁体供試体による検証実験 作製して3年が経過した壁体供試体を用い、コア供試体を採取し、強制乾燥試験を行った。また、同一調合の梁型供試体の乾燥収縮ひずみと比較し、コア供試体においても、強制乾燥試験による標準乾燥収縮ひずみの推定は可能であることが示された。またこの方法を用い、既存コンクリート系構造物のひび割れ原因推定手法の提案を行った。
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