マジャパイト王国末期の15世紀後半、ジャワ島北海岸にイスラームが伝来し、それを庇護する小王権が出現した。礼拝施設(モスク)が必要とされ、イスラーム権力の拡大とともに各地に建設された。本研究は、18世紀末までに建設され、現存するモスクを取り上げ、その機能、立地、平面、構法、装飾などの特徴を、主として現地調査から得られたデータを分析することによって明らかにすることを目的とする。その結果、1)大モスク、聖地モスク、霊廟モスクに分けられ、それは規模にも対応する、2)中心の四本の主柱が方形屋根を支え、その周囲に庇を巡らせて広い室内空間を作り出している、3)柱と桁による軸組構造であり、〓と栓によって結合し、扇垂木の上に柿葺きとしている、4)装飾を含む基本的な木造技術は前代からのものを受け継いでいることが判明した。ジョクジャカルタ王朝下の18世紀後半、構法の変化が見られ、これは地震国にあっての工夫と考えられる。今後、このような木造技術が具体的にどのような発展をしたのかを、宮廷建築を含めて検討する必要があろう。
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