研究概要 |
放線菌Streptomyces kasugaensisが生産するイネいもち病用抗生物質カスガマイシン(KSM)の生合成(kas)遺伝子群を再構成し,放線菌・大腸菌でKSM生産を導くことを目標に最少KSM生合成遺伝子(MKB)カセットを構築した。 kas遺伝子群の7種の転写単位遺伝子(群)を転写活性化因子KasTによらずに放線菌・大腸菌で恒常的に発現させるため,放線菌・大腸菌で発現可能なTn5のネオマイシン耐性遺伝子(neo)プロモーターに,PCR増幅した7種のkas遺伝子(群)を連結した。7種の増幅断片の両端に付加した制限酵素部位を用いて,転写方向を同一にして直列に連結させて,Xbalで切り出し可能な18kbのMKBカセットを構築した。 本カセットを放線菌染色体組込み型ベクターpTYM19のXbal部位に挿入し,放線菌Streptomyces lividansに導入した形質転換体はS.kasugaensisに匹敵するKSM生産を行った。しかし,長時間の培養でカセット内の一部が欠失した。一方,MKBカセットを大腸菌用の自律増殖型の高コピーないし低コピーベクター(pUC19,pSTV28)のXbal部位にそれぞれ挿入して大腸菌JM109に導入した。大腸菌はKSM前駆物質のmyo-イノシトール(MI)を生合成しないため,これら導入株をMl添加の培養培地にて,種々の条件で検討したがKSM生産は見られなかった。そこで,放線菌Streptomyces avermitilisよりMl同化系に必須なMl-1リン酸シンターゼ遺伝子ino1をクローン化してneoプロモーターに連結したino1発現カセットを,MKBカセットと共にJM109株に導入したが,これらの導入株においてもKSM生産は見られなかった。 このように,今回構築したMKBカセットは異種放線菌では有意にKSM生産を導くことが判った。
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