研究概要 |
【1】 放線菌・大腸菌で恒常的にカスガマイシン(KSM)生産を導く生合成遺伝子カセットの構築 Streptomyces kasugaensis由来のKSM生合成(kas)遺伝子クラスターを用いて,各kas遺伝子の上流に高効率のRBSを付加し,さらにKSM推定生合成経路に従って4種のモジュールに再編成した。さらに4種のモジュールを大腸菌・放線菌で高活性を示すプロモーターPdbfBまたはPneoに連結した。一方,KSM構成糖のmyo-イノシトールの生合成遺伝子inolをS.avermitilisよりクローン化して,Pneoによる強制発現ユニットを構築した。このようにして作製した4種のkas遺伝子群モジュールとinol発現ユニットについて,これらのプロモーターのPdbfBないしPneoが同方向に多重連結しないように配置して連結したKSM生合成遺伝子カセットを構築した。しかし,本カセットで形質転換した大腸菌およびS.lividansはいずれもKSMを生産せず,機能未知としてモジュールから除外したkasBないしkasOがKSM生合成に関与していることが示唆された。 【2】 ミノサミノマイシン(MSM)とKSMとのハイブリッド物質の生産 MSMはKSMの構造類似体で,Mycobacterium smegmatisに抗菌活性を示す抗生物質である。MSMとKSMのハイブリッド物質の生産をめざし,異種放線菌でKSM生合成を導くKSM生合成プラスミド(平成20年度に構築)をMSM生産菌Streptomyces sp.MA514-A1の染色体へ導入した。その結果,導入株はPseudomonas fluorescensのKSM高度感受性変異株およびM.smegmatisの2菌株に顕著な抗菌活性を示す物質を生産した。一方,導入株の培養液のHPLC分析からはKSMは検出されなかった。現在,抗菌活性の原因物質について,培養液の機器分析により解析を進めている。 【3】 MSM生合成遺伝子群のクローニング MSM生合成遺伝子クラスターのクローン化をめざし,MSM生産菌MA514-A1株のゲノムより,kasR(S.kasugaensisのカスガミン生合成遺伝子)およびendP(S.fungicidicusのenduracididine生合成遺伝子)の相同遺伝子の一部をクローン化して,これらの塩基配列を基にPCRプライマーを設計した。MboI部分消化物(約40kb)よりなるMA514-A1株のコスミドゲノムライブラリーに対してこれらプライマーを用いてcolony-direct PCRを行い,kasRおよびendP相同領域の両方を含む約31および38kbの2種のクローン化DNA断片を得た。
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