(1)Streptomyces kasugaenslsが生産する抗生物質カスガマイシン(KSM)の生合成遺伝子クラスターから構築したKSM生合成プラスミド(平成20年度)を、異属放線菌Rhodococcus erythropolis L-88の染色体に導入したところ、KSMを生産した(54μg/mL)。これは、Streptomyces属放線菌由来の抗生物質がRhodococcus属放線菌において生産できた数少ない例である。 (2)KSMとの構造類似物質で、Streptomyces sp.MA514-A1が生産する抗生物質ミノサミノマイシン(MSM)の生合成遺伝子クラスター(平成21年度にクローン化)について解析を行った。その結果、約32kb領域に21遺伝子群(msmA~msmU)が存在し、msmA~msmHはカスガミンとイノサミンのアミノ糖鎖部分、msmJ~msmUはenduracididine側鎖の生合成に関与していると推定された。一方、これら遺伝子群の転写活性化推定遺伝子は見出されなかった。 (3)KSMとMSMとのハイブリッド物質を生産誘導するため、両物質の生合成遺伝子クラスターを、異種遺伝子発現用のStreptomyces lividans TK21株の染色体に組込んだ多重導入株を作成した。本株は、KSMとMSMを同時に生産したが、目的のハイブリッド物質は検出できなかった。 (4)MSM生合成遺伝子クラスターのアミノ糖鎖生合成推定遺伝子群(msmA~msmH)、enduracididine生合成推定遺伝子群のmsmO~msmUならびにmsmS~msmUの3領域をそれぞれS.lividans TK21株の染色体に組込んだ。いずれの導入株も、Pseudomonas fluorescensに対する抗菌物質を生産した。これらの構造に関しては検討中である。
|