【目的】岩海苔は独特な香りと風味を有し、焙焼後に温水浸漬すると海苔旨味成分のIMPが増加することが知られている。これにはAMPデアミナーゼ(AMPdase)の関与が示唆され、焙焼処理でも岩海苔中のAMPdase活性が消失しないことに興味が持たれている。昨年度は、本酵素の単離・精製法の検討を行ったが、精製した酵素は、不安定で失活しやすい。そこで、改めて酵素の安定性を検討するとともに、精製方法について検討を加えた。 【方法】岩海苔は西伊豆土肥産のものを使用した。酵素の安定性を検討する為、細断した岩海苔を未処理、焙焼、温水浸漬、温水浸漬-焙焼し、過塩素酸抽出法によりエキスを調製し、AMPとIMP含量を三菱MCIGELを用いるHPLCで測定した。また、トリス酢酸緩衝液を用いて粗酵素液を調製、室温と5℃に放置し、これを用いてAMP酵素反応を行い、上記HPLCシステムで酵素活性を検討した。また、昨年度の結果より、硫安分画の過程での酵素活性のロスが大きかったことから、TOYOPEARL HW-50Fを用いる精製法の検討を行った。 【結果】岩海苔中のAMP、IMP含量は、未処理、焙焼処理ではAMPが多量に存在し、IMP含量は微量であった。また温水浸漬、温水浸漬-焙焼ではAMPは激減、IMPが激増した。これは、水分付加によりAMPdase活性が賦活化された為と考えられた。また粗酵素液を室温に7日間放置してもAMPdase活性は維持され、温度に対して海苔中では、安定な酵素であることが分かったが、精製した酵素は比較的不安定であった。今後、さらにTOYOPEARL HW-50F及びイオン交換体を用いてのAMPdase精製を行う予定である。
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