マウス肺組織より血管内皮細胞をコラゲナーゼ処理で単離し、その懸濁液からCD102抗体でコーティングしたダイナビーズおよび分離カラムを用いて内皮細胞を単離し、初代培養を行った。この単離培養マウス血管内皮細胞にパッチクランプ法を適用し、カレントクランプモードで電位測定を再度試みた。ナイスタチンを含む電極液を用いたperforated patch法および通常の電極液を用いたruptured patch法の両方の方法を用いて膜電位を測定した所、その膜電位は-30mVから-70mVの間で観察された。この内皮細胞に対してK^+チャネル開口薬であるピナシジル100μMあるいはニコランジル1mMを与え、膜電位の測定を試みた。これらの薬物のよって明らかな内皮細胞膜電位の変化は認められなかった。そこで、これらの単離内皮細胞のmRNAをマウス心房筋組織のreal time PCRでmRNAと比較検討した。心房筋組織においてはKv4.2、Kv1.5、KCNQ1、KCNH2等の電位依存性K^+チャネル遺伝子、Kir3.1、Kir3.4と言ったリガンド作動性K^+チャネル遺伝子、そしてCav1.2と言ったL型Ca^<2+>チャネル遺伝子が発現していた。また、ATP感受性K^+チャネルの構成成分であるKir6.1、Kir6.2、SUR1、SUR2も心房筋に十分発現し、特にSUR1は高度に発現していた。これに対してマウスの肺血管内皮細胞においてはKir6.1が心房組織の1/3程度の発現が観察されたもののKir6.2、SUR1、SUR2の発現がほとんど認められなかった。また、Cav12の発現もごくわずかであった。血管内皮細胞の部位差によることも考慮し、購入した大動脈内皮細胞のreal time PCRでもATP感受性K^+チャネルの構成成分であるKir6.1、Kir6.2、SUR1、SUR2はほとんど認められなかった。
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