潰瘍性大腸炎(UC)では、罹患期間の長い炎症粘膜およびUVに合併した大腸癌にMUC1とMUC5ACの発現を高頻度に認めた。これらのムチンはUC合併大腸癌の有用なサーベイランスマーカーになると考えられる。クローン病の痔瘻に発生した腺癌の免疫学的表現型は、肛門管上皮ではなく直腸粘膜の特性を有していたので、このような腺癌は主として直腸粘膜から発生したと考えられる。UC合併大腸癌にはMSH6遺伝子の変異、CDKN2A/p16遺伝子のメチル化、遺伝子の不安定性を認めた。一方、UC合併悪性リンパ腫ではこれらの遺伝子変化は見られず、EBウイルスの感染を検出した。UC合併大腸癌の発生にはこれらの遺伝子変化が重要な役割を果たし、悪性リンパ腫ではEBウイルスの感染したBリンパ球が長期の炎症を背景に腫瘍化した可能性がある。
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