虚血変性アルブミン(ischemia-modified albumin:IMA) は、虚血状態においてN末端アミノ酸8個に非可逆的変性をきたしたアルブミンである。呼吸不全で測定される血液ガスや酸素飽和度は、その瞬間での酸素濃度を示す指標であり、長期間の低酸素状態を反映するものではない。アルブミンの血中半減期は約1週間であるため、糖尿病における血糖値とグリコアルブミンの関係の如く、IMA が過去一週間の低酸素状態の指標となるかもしれないと申請者は推定した。測定方法は申請者の既報によった。同意の得られた被験者より血液1mlを採取し、比色法で定量する簡便な分析法である。種々の慢性呼吸不全患者で臨床経過との対応を検討した結果、今回検討した範囲では有意な変動を認めることはできなかった。その原因として、採血から分析までの経時的変化、検体保管条件の関与が推定され、引き続き検討が行われている。今回の研究を通じ、低酸素による組織虚血状態に関わるマーカーを幅広く渉猟した結果、血清paraoxonase1 (PON1)活性や、soluble receptor for advanced glycation end-product (sRAGE)が有望な代替候補として浮上しており、長期低酸素状態のマーカーだけでなく動脈硬化や脳血管障害のマーカーとなり得る可能性が示されつつある。
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