過去に石綿製品を製造していた工場3ヵ所について、周辺住民の死亡調査を実施した。1942年から1991年まで茶石綿と白石綿を年間数千トン使用して石綿製品を製造していた工場の周辺住民502家族を解析対象とした15.5年間の追跡調査では、石綿相対濃度が最も高いと推定された群での肺がんによる有意な過剰死亡が認められた。このことは、石綿の近隣曝露が肺がんによる死亡リスクを上昇させる可能性を示唆している。一方、1914年から2001年まで白石綿を年間約500トン使用して石綿製品を製造していた工場の周辺住民449家族を解析対象とした23年間の追跡調査では、いずれの曝露群でも石綿関連疾患による有意な過剰死亡は見られなかった。これら2つの調査の追跡率はいずれも90%程度であり、かつ対象者数も同程度のため比較可能であるが、2つの工場で使用された石綿の種類と使用量の差が結果に影響したものと考えられる。1954年から1995年まで白石綿を年間3500トン、1957年から1975年まで青石綿を年間4700トン使用して石綿製品を製造していた工場の周辺住民52家族を解析対象とした32年間の追跡調査では、男性で中皮腫による過剰死亡が認められた。この工場での多量の青石綿使用がその原因と考えられる。
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