胃・食道上皮においては、H.pylori感染、または胃酸および胆汁酸暴露によって、腸上皮への分化変更が生じる。この分化変更(幹細胞の再プログラム化)過程で分化型胃癌やBarrett腺癌が生じると一般的に考えられている。一方、この過程において、幹細胞の分化制御に関与しているSox2遺伝子発現が抑制され、相補的にhomeobox遺伝子Cdx2が誘導されることを本研究者のグループが見出している。このため、in vitroでのSox2抑制Cdx2発現誘導モデルを作成するために、Sox2 siRNA inducible vector(Clontech)をマウス正常胃培養細胞株GSMO6に遺伝子導入し、Doxycyline(DOX)存在下でSox2を抑制するstable clone(Sox2KOGSMO6)を樹立した。この系を用いて、Sox2KOGSMO6を72 hrs Dox存在下で培養し、Dox有無でSox2の抑制が、RT-PCRあるいはWestern blotレベルで確認できた独立したtotal RNA 3組を作製した。これらRNAに対してAgilent Expression Arrayを用いてMicroarray解析を行った。その結果、Sox2の発現抑制により発現が2倍以上へと増強を認めた遺伝子は129遺伝子、1/2以下へ発現が減弱した遺伝子は69遺伝子であった。これらの遺伝子に対し、RT-PCRで生検検体・ヒト胃癌細胞株に対しスクリーニングを行い、Sox2発現抑制による分化・発癌機構に関連の予想される遺伝子3個を候補遺伝子として抽出した
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