著者らは脂肪肝炎発症機序における、肝臓におけるインスリン抵抗性と、抗酸化ストレス因子との相互作用、およびその各々の病態に果たす役割を明らかにすることを目的としている。そのため、著者らは、本年度、インスリン受容体遺伝子ヘテロ改変マウス、肝臓特異的SOD2欠損マウスに対して、メチオニン・コリン欠損食を、各群が同一カロリーを摂取するように12週間施行して、非アルコール性脂肪肝炎モデルを作成した。また同様に高脂肪食を各群が同一カロリーを摂取するよう24週間施行した非アルコール性脂肪肝炎モデルも作成した。そして、さらに、上記の遺伝子変異マウス・wildマウスに、CCL4の4週間投与、DMNの3週間投与、胆管結紮による肝硬変モデルをも作成した。現在これらの各群のマウスの肝臓、内臓脂肪、皮下脂肪、骨格筋、血清を用いて、脂肪肝・肝障害・肝臓線維化の差異を、組織学的・血清学的に評価検討している。また各群の肝臓よりRNA、蛋白質を抽出し、DNA array法、Real time PCR法、Western blot法、Gel Shift assay法、免疫沈降法を用いて、PI3kinase、Aktシグナル、サイトカインを始めとした各種パラメーター及びFOXOを始めとした転写因子活性変化を定量的に評価している。これらの解析結果により、肝臓におけるインスリン抵抗性と酸化ストレス状態の双方を配慮した新たな治療法が開発できるものと考えられる。
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